TLC178


軟部肉腫(Soft Tissue Sarcoma, STS)
軟部肉腫は50種類以上、それぞれ独特の臨床表現、予後と治療法があります。希少性と異質性で軟部肉腫の研究と治療が難しくなります。米国で、新たに軟部肉腫と診断された患者は毎年12,310症例、年間5,000名の死亡数です。軟部肉腫の標準的化学療法の確立は難しいです。手術によって切除できない転移がんの患者にとって、化学療法は緩和医療です。一般的にこのような患者はイホスファミドとドキソルビシンで処方され、奏功率は50~60%ですが、12~18ヶ月の全生存期間を改善することができるかは不明です。その他の第2選択療法にも限界があり、緩和治療に過ぎません。

横紋筋肉腫(Rhabdomyosarcoma, RMS)
横紋筋肉腫(RMS)は骨格筋の前駆細胞から発生する肉腫です。頭頸部、四肢、泌尿器や生殖器など、全身の様々な部位から発生し、10歳の小児で多く見られる腫瘍です。米国で新たに横紋筋肉腫(RMS)と診断される患者は毎年350症例で、希少疾患です。可能であれば、手術切除は横紋筋肉腫の主な治療法です。しかし、進行がんの患者は予後不良です。多剤併用化学療法など現在推奨されている治療法に、ビンクリスチン、ダクチノマイシンやシクロホスファミドは使われています。

積極的な多剤併用化学治療に効果を示す転移性横紋筋肉腫(RMS)の患者は20%未満で、診断3年後再発する横紋筋肉腫(RMS)の患者は30%もいます。再発する横紋筋肉腫(RMS)の患者の殆どは1年以内(生存期間中央値0.82年)に死亡します。5年生存率は20%未満、再発の化学療法のガイドラインが確立されていないのが現状です。横紋筋肉腫(RMS) の発見後30年間、治療法に大きな進歩はありませんでした。


非小細胞肺がん(Non Small Cell Lung Carcinoma, NSCLC)
2017年アメリカがん協会により、米国のがん死亡率で最も高いのは肺がんで、毎年死亡数155,870名と発表されています。米国では罹患率が2番目高いのも肺がんで、年間222,500症例数が増え続けます。非小細胞肺がんは肺がん患者の8割を占めます。主な種類として腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんの3種類に分類されます。手術が可能な早期に発見されることは少なく、第1選択治療として免疫療法、標的療法、プラチナ併用の化学療法が使われています。

アメリカがん協会の2017年がん関する臨床ガイドラインにより、ドライバー変異を有しないPD-L1低発見の非小細胞肺がんの患者にとって、細胞毒性併用の化学療法は第1選択療法として推奨されています。第1選択療法の免疫療法に治療効果を示さない、もしくは第2選択療法の免疫療法が採用できない、細胞毒性併用の化学療法で治療した後さらに進行したがん患者は、交叉耐性の危険性と毒性を低減させる救済療法を求めています。

TLC178は当社独自のNanoX®技術を用い、小児のかかることが多い横紋筋肉腫(RMS)を治療するためのビノレルビン抗がん剤です。

ビノレルビンは、横紋筋肉腫(RMS)や他の肉腫治療の適応外使用として、ビンカアルカロイド系の化学療法の抗がん剤です。TLC178は、毒性を下げつつ少ない投与回数で効能を改善し、ビノレルビンを封入したリポソーム製剤です。

開発当初、TLC178は小児横紋筋肉腫(RMS)治療薬として開発されています。当社のNanoX®技術を駆使することで、TLC178は、腫瘍周辺に存在する血管外に分子を漏出しやすく腫瘍に滞留するEPR効果を利用することにより、正常組織より腫瘍への薬物の集積性を高め、薬物の持つ副作用を低減することを図ります。骨髄抑制のリスクを顕著に軽減することは、重症好中球減少の発症率を下げる結果に繋がります。

小児横紋筋肉腫(RMS)の研究と同時に、これから、軟部組織肉腫や非小細胞性肺癌などビノレルビンの承認済みの適応症についても、TLC178に対して一連の試験を行う予定です。

TLC178

有効成分

ビノレルビ 

DDS技術

NanoX®

適応症

横紋筋肉腫 / 軟部組織肉腫 / 非小細胞性肺癌

強み

  • 毒性と副作用の低
  • 適応拡大
  • 受動的標的指向化治療の血中滞留性の増加

開発状況

I/II